夢見る鼻血
PINT8
「Kyoto New Moon Inc.の新商品のご案内に参りました」
モニターに映る、ベージュスーツの女性。
「……間に合ってます」
「定番の品もお持ちしたのですが……」
モニター越し、匂いそうな魚偏模様の堤袋。
お城に入ると、ミナは見るものすべてに興奮していた。「本当に夢みたい」と何度も口にした。
クロームリムのテーブルの下には、グレーのふわもこラグ。レザーの青いソファに座りご飯を食べていたらふと疑問に思った。
「ねえ……これ、汚したらどうなるの」
「弁償かな」
「高そうだよ」
「急に食べづらいこというのやめてくれない?」
ミナが笑う。
「やっぱり、言葉にすれば叶うんだね」
「そうだよ。信じないと。家賃もだいぶ浮くから、私、自分の夢にまた向き合ってみようかなって考えてる」
「ミナってデザイナーになりたかったんだよね。じゃあ、夢見のすずめさんって知ってるの?」
そう言ったら、ミナが黙った。
そのあと箸を置いて、正座した。
「知ってるもなにも、どれだけ憧れたか。デザイナーになりたいってきっかけにもなったひと。でももう貴重でなかなか手に入らない。出回ったとしても高価だよ。私も数えるほどしか持ってない」
「本当に存在したんだ」
そう言ったら、ミナが固まった。
「あんた! そんなことも知らないで、夢見で店員してるの!?」
「す、すみません」
ミナの好きなたまごを差し出す。
「すずめさんがどうしたの」
「町に猫がいるでしょ?」
「ああ、何匹か猫いるよね」
「ユガさんがいうには、白猫がすずめさんなんだって」
せっかく気を取り直したのに、ミナにいくらを取られた。
「それでね、すずめさんはアドバイスをくれるんだって。あたしのことも合格って言ってくれたって」
すずめさんにずっと見られたり、ケガしそうになったとき、大声で鳴いたり……。ミナはいつもあたしの夢見がちな話をメルヘンメーカーと言いながらもバカにしないで聞いてくれる。
ふうん。と頷いたあと、あいつ、おかしいとこあるからなあ。と呟いた。ミナの好きなミュージシャンは、いつもマスタアドを敵対しているから、ファンであるミナがそう言うのもわかる。だからミナは、あたしの働いているところに絶対に来ない。
「私もすずめさんに会いたいな」
「三張 のケに住みついてるみたいだよ。ミケのところ」
「そこだよ!」
「なにがですか」
「そこがすずめさんのお店だったんだよ」
すずめさんのメモリアルサイトに訪れる。羽根の先がスクリーンに花を宿して、一匹のすずめが降り立った。影絵の世界がきらきらと輝きだす。
チュン
儚げなフォントが鳴いて、画面が切り替わった。
真白のドレスとヴェールを纏うすずめさんは、透けるような肌で、清らかで、とても美しかった。あの猫に漂う気品と重なる。
白と黒のコントラスト。そこに宝石のように色をちりばめる。
『決して主張しすぎないように
輝くのは自分自身だから
光に埋もれてしまわないように』